家庭菜園の基礎知識

出典: たまちゃん村

目次

家庭菜園を始める前に

野菜や草花などの植物は、基本的には自分の力で生長し、花を咲かせ、実をつけます。私たちがやることは、植物がよりよい環境で育つことが出来るようになるため、その手助けをすることです。今植物が何をほしがっているのか、何を悩んでいるのかを考え、欲しがっている物(=水や肥料)を提供し、悩んでいること(=害虫病気)を取り除いてやることが、「植物を育てる」ということです。決して、自分の思い通りに水や肥料を押しつけて、生長を促進させようとすることではありません。それは根腐れ肥料当たりの原因になり、植物を枯らしてしまうことになりかねません。 ですから、まず私たちがやることは、植物の気持ちを考え、どうすれば喜んでもらえるかという思いをもつこと。つまり、「思いやりの心」を持って植物に接してあげることが一番大切なことなのです。そうすれば、植物はその思いに答えて、元気に生長して花や実をつけてくれることでしょう。

それでは、植物の育つ環境作りから始めましょう。

家庭菜園の基礎知識

その1.「野菜作りは土作りから」

野菜や花などの植物にとって土は、根を張り、生長するのに必要な養分や水分保持し、それらを植物に提供するのに非常に大切な物です。土作りがしっかりしていないと植物は思ったように生長してくれません。まずは基本となる土作りから始めましょう。

野菜作りに適した土は、

  1. 水はけと通気が良いこと
  2. 水持ち(保水力)があること
  3. 土の酸度が適正であること
  4. 肥料分に富むこと

があげられます

1.水はけと通気が良いこと

2.水持ち(保水力)があること

 土は団粒構造と呼ばれる状態になっているとき、水はけと通気、保水が良い状態になります。これには堆肥などの有機物を土に混ぜよく耕すことで、土の粒子と堆肥とが混ざってできあがります。また、土を耕すことで下の方にも新鮮な空気を混ぜることになり、土壌中の酸素量が多くなるので、植物の生長にいい効果があります。堆肥の量は初めての土地ならば1坪あたり20kgぐらい、何度か堆肥を混ぜている土地なら2~3坪に20kgぐらいを施します。(ちなみに1坪は畳2枚分の面積、約3.3㎡です)

3.土の酸度が適正であること

 植物は生長するのに最適な酸度があります。主に植物は中性から弱酸性の範囲内でよく育ちます。また、植物が生長するのには石灰(カルシウム分)が必要です。しかし、主に肥料は酸性の物が多いため土壌が強い酸性に傾きやすいこと、植物が石灰を吸収するので、土壌中の石灰が不足すること、冠水により石灰が流出することから、作物を植える前には消石灰、苦土石灰、有機石灰などと呼ばれる石灰分を施して、酸度の矯正と石灰の補充をします。石灰は基本的には土の酸度を測定してから適量を施しますが、だいたい消石灰、苦土石灰は1坪あたり300~400gぐらい、有機石灰で1坪あたり1kgぐらいを施します。消石灰などは撒いてから10日ほどはおいておく必要がありますが、有機石灰は撒いてすぐに野菜を植えても大丈夫です。逆に土がアルカリ性に傾いている場合は、酸性肥料の過リン酸石灰などを与えて弱酸性に持っていくようにします。

4.肥料分に富むこと

 一般的には化成肥料を上げることが多いです。ただ有機物を含んだ肥料をあげる方が、肥料あたりも少なく、できた作物に甘みなどが出やすいため、配合肥料と呼ばれる有機肥料が野菜には適しているようです。肥料の効きは化成肥料が早く、有機肥料はゆっくりと効果が出るため、すぐに効果を出したい時は化成肥料を、長期間肥料を効かせたい時は有機肥料を、という使い方もあります。  植物が生長するのに使われる肥料は窒素・リン酸・カリの3種類が最も多く、これに先の項で述べた石灰(カルシウム)、微量要素と呼ばれるマグネシウムや亜鉛、鉄、銅、モリブデンなどが不可欠になっています。微量要素は土壌中に含まれている量でほぼ事足りるのですが、窒素・リン酸・カリと石灰は不足しやすいため、先に述べた化成肥料や配合肥料で補充をします。

<肥料の効果>

  • 窒素・・・葉や茎の中でタンパク質やアミノ酸の成分になり、植物の生長を助けます
  • リン酸・・生長の盛んな部分や花やつぼみ、種に多く、根の伸長に大きく働きます。
  • カリ・・・光合成を盛んにし、果実の付や芋の品質を良くします

      また、窒素の効き過ぎを押さえる効果もあります、

 これらの成分が不足すると、生長が遅くなる、花芽が付かない、実が付かないなどの症状が出ます。逆にあげすぎると肥料当たりを起こしたりするので、適量を与えるようにしましょう。  また微量要素が不足すると、葉の色が黄色くなったり、病気にかかりやすくなったりします。有機質肥料は微量要素を含む物もあるので、それらで補充します。


その2.育てる時の注意事項

1.害虫に気をつける

 野菜に害虫が付くと、いつの間にか葉に穴があいていたり葉がなくなっていたり、実が傷ついたりします。また虫によっては病気を媒介する物もありますので、こまめな殺虫をするようにします。

主な害虫には

体長1mm程度の小さな虫で、植物の汁をすい、大量に付くと植物を枯らすこともあります。またウイルスなどを媒介するので、病気で植物が枯れることもあります。
焦げ茶色をした芋虫のような物で、大きくなると体長3cmぐらいにもなる蛾の幼虫で、昼間は土の中に潜り込み、夜地上に出て葉を食い荒らす。食欲旺盛で一晩で葉をすべて食べてしまうこともある。
体長数mm程度の小さな蛾の幼虫で、これも葉を食い荒らす。
体長1mm以下のとても小さな虫で、土の中に生息します。植物の生長を阻害したり、根にこぶを作ったり、根の大部分が腐ったりします。また大根などでは又根が多くなったり、サツマイモでは芋が小さくなったりします。

 オルトラン粒剤やオンコル粒剤、モスピラン粒剤などを移植の時に株もとにまいておくと、長期間害虫を予防することが出来ます。また付いてしまった害虫はオルトラン水和剤やマラソン乳剤、スミチオン乳剤などを噴霧器等で散布します。少量ならばスプレータイプのパイベニカやオルトランなどもあります。センチュウ類は土作りの際に土壌消毒剤を散布したり、ボルテージなどの専用殺虫剤をまいたり、最近ではマリーゴールドを植えるといいと言われています。

 農薬をあまり使いたくない場合には、木酢液を希釈してかけると、害虫の忌避効果を得られます。また天然成分を主成分とした殺虫剤には、すぐに分解してしまうので作物にかけても大丈夫な物もあります。

2.病気に気をつける

 野菜も人間と同じように様々な病気にかかります。病気になると成長が止まったり、奇形になったり、枯れたりします。病気はかかってしまうと治療が難しく、発病してしまうと薬剤が効かない物もあるので、かからないように予防をメインにします。

 主な病気には

葉の表面や茎が、うどん粉をまいたように真っ白になってしまう病気。カビの一種で葉を痛めたり、ひどい時は植物が枯れたりします
葉に濃淡のモザイク状のまだら模様が出ることからこの名前が付いています。株の萎縮や矮化、葉の縮れなどがでます。発病すると薬剤は効かないので、感染経路であるアブラムシの退治を行うことで予防します
アブラナ科に発生しやすく、輪郭のはっきりしない黄色がかった斑紋ができ、次第に広がって灰白色になります。低温多湿や窒素過多によって起こりやすくなります
トマトなどに発生しますが、カルシウム不足が原因の病気なので、土作りの際にしっかり石灰を与えるか、追肥と一緒に苦土石灰などを少量与えることで発生を防ぎます。

 病気は予防がメインになるため、野菜が元気な時にかけることが重要です。病気になった物は薬剤散布で病気の進行を抑え、病気によったら株をのけて、新しい物を植えるようにします。また、カルシウム分が不足するとうどん粉病が発生しやすくなるので、微量要素不足にも気をつけるようにします。

 病気の薬としては、ダコニールやダイセン、ベンレートなどがあり、水で薄めて噴霧器等で散布します。また簡単に使えるスプレータイプの殺虫殺菌剤もあります。


 殺虫剤、殺菌剤とも、水で薄める際は、まず薬剤を少量の水にとかしたあと、規定倍数に必要な水量にします(規定倍数はそれぞれの薬剤に記載しています)。その時に展着剤と呼ばれる薬を混ぜると、散布した時に植物の表面につきやすくなり、薬の効果を高めるようになります。薬剤は「水和剤」→「乳剤」→「展着剤」の順番で水に混ぜるようにします。


3.連作に気をつける

 野菜は同じ科の物を同じ土地に連続して植えると、生長が著しく悪くなったり、枯れてしまったりします。原因としては前作の野菜に付いた病害虫が土の中に残っている場合、前作の野菜が出す特殊な成分が土の中に残り次の野菜に影響を与える場合、土壌中の微量成分等が極端に不均等になっている場合があります。

 主に連作障害が出る野菜としてはナス、トマト、ジャガイモなどのナス科植物。豌豆、そら豆、枝豆(大豆)、インゲンなどのマメ科の植物、白瓜、キュウリ、スイカなどのウリ科の植物などがあります。逆に連作しても障害が出にくい野菜にはサツマイモ、ネギ類、新菊などがあります。

 障害が出る野菜は、最低でも2年、長いもので7年ほど、同じ科の野菜を植えないようにしますが、小面積の土地だと難しいです。そこで、野菜苗ならば接ぎ木苗を植えたり、土壌消毒をしたり、土を1m近く深いところのものと入れ替えたり、木酢液をかけたりすることで軽減することが出来ます。なるべくは畝を替えるなどして連作はさけ、それに次いで上記の方法をとるなどしましょう。